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「市川の大気環境の報告会と講演会」概要報告

日 時  2015年4月4日(土) 午後1時40分~5時

場 所  市川市市川公民館  第一和室

① 2014年度市川市内二酸化窒素(NO2)濃度測定結果の報告

市川の空気を調べる会   鈴木一義

・6月度、12月度とも定例測定日は雨に遭ったが、両回とも100名を超える協力者で測定が行われた。市内平均濃度は両回ともこれまでの最低濃度に近い値であったが、市川市測定局の24日間という長期間の平均濃度の年度変化図で見ると、12月度はこれまで通りの漸減傾向を示したが、6月度は前年より上昇が見られた。また同図では沿道地(自排局)と住宅地(一般局)の濃度差の縮小が両回ともに見られ、市内の大型貨物車の増加による住宅地に及ぶ汚染の広範囲な広がりの影響が考えられた。

・市を5地域に分けて比較すると、貨物車の通る沿道は汚染が高まり、その走行量が多い場合は住宅地の汚染も高まることが明瞭に示された。住宅地を縦断する外環道路による汚染の広がりが懸念される。

・測定報告書に添付したカプセル毎の濃度一覧表により、これまで通り町名別の汚染状況や道路ごとの汚染状況、市内低濃度高濃度地点が分かり、今回新たにカプセル番号順の一覧表も加えられた。

② 市川の道路環境の現状と将来

まず東京外環道路について市川市松戸市外環連合の高柳俊暢さんが報告した。

事業の現状は、高速部は全線で工事が進められていて、当局の言う2018年3月末の目標より1~2年遅れで開通の予定。国道部分は4車線のうち当面2車線で供用されよう。

環境に関しては、当局の影響予測では、大気汚染の増加量は実際とはかけ離れた0に近い低値となっているが、騒音は一部の地域で先の広島高裁で断罪された受忍限度を超えている。市川市は2013年に当局に対して環境対策の要望を出しているが、期限の3月を過ぎてもいまだ回答がない。

今後の問題点としては、

・側道が当初計画とは異なり片側2車線の所がかなりあり、道路幅の広がりで横断が難しくなる可能性がある。

・道の駅は実体は大型車の一時休憩用プールになると思われる。

・北千葉道路と更に第二湾岸道路が車両増加を理由に建設促進される可能性がある。

・地域分断で生活支障が現実問題になってきている(菅野、ほか)。

この段階で、何を得られるか考えねばならない。

 

続いてやはり建設中の幹線道路3.4.18号線について、関係者から報告された。

市川市の都市計画の違法性を訴えた訴訟は認められなかったが、審理を通じて計画の真相と実態が明らかになった。この道路を開通させれば、市内だけでなく市外交通も昼夜を問わず集中し、全国に知られた黒松の風致地区八幡も、渋滞、騒音、大気汚染によって生活環境破壊は深刻となる。市川市当局は平成27年度中の完成を急いでおり、開通後の事態は切迫しているので、住民としては、これらの問題点を当局に突き付けて行きたい。

③ 超微小粒子(ナノ粒子)の健康影響

梅澤雅和先生 東京理科大学 研究推進機構 総合研究院 講師

大気中微小粒子(PM2.5)の健康影響

ここ数年の中国における冬季の大気汚染とその日本への越境汚染が問題となり、汚染の主体をなすPM2.5がクローズアップされた。アメリカでは20年余り前に、各種の大気汚染と死亡率との関係を調べるために、各種汚染の濃度が異なる6つの都市の死亡率を調べたところ、各種汚染物質のうちPM2.5のみが死亡率と高い相関性を持つことが分かった。更にPM2.5の暴露によって呼吸器、脳卒中、循環器疾患の発症、悪化更には死亡率にも正の相関をする(濃度が増すと疾患が悪化する)という研究結果が発表され、アメリカでは1997年にPM2.5の環境基準が制定された*1)。日本でも環境省からPM2.5情報が出され*2)、高濃度時の外出注意報等が出されることになっている。

 

*1) 年平均値は当初15μg/m3で2013年改訂され12μg/m3、日平均値は35μg/m3

2)日本では12年遅れて2009年にPM2.5の環境基準制定、

年平均値15μg/m3、日平均値35μg/ m3

 

超微小粒子(ナノ粒子)とは

粒子の大きさを単純に言えばPM2.5は、直径2.5μm以下(1μm=1/1000 mm)の粒子、ナノ粒子は0.1μm以下(1μm=1000nm、0.1μm=100nm)の粒子。例えば0.6μmのPM2.5が砕けて0.06μmのナノ粒子になったとすると、ナノ粒子の体積は1/1000になるから1000個のナノ粒子が生じたことになり、表面積は1個が1/100となり、1000個だから全体で10倍になる。粒子の表面が反応の場になるから、ナノ粒子に変化すると反応性が強くなり、これが工業材料で有用に使われるが、生体にとって有害な影響も強まる可能性が考えられる。

ナノ粒子は凝集し易く、車から排出されると沿道近くには多量に分布するが、離れると急減する。これが広く分布するPM2.5とは異なる特徴である。

 

ナノ粒子の生体影響

吸入されたナノ粒子は気道奥の肺胞にまで到達し、そこから血管を経て身体の他の組織にも移行する。動物実験ではナノ粒子の投与で炎症性の免疫反応が起き、妊娠マウスに投与すると出生仔の脳やオスの生殖器に移行することが確認されており、仔の外界への反応性や運動量を低下させたり、アレルギーを引き起こしやすくする。これらの研究から、妊娠中の母親のナノ粒子暴露が、出生後の健康に影響する可能性も考えられる。しかしこれまでの研究では、PM2.5の健康影響は明らかになっているが、ナノ粒子についてはまだ明らかではない。今後、更なる研究により許容暴露量等を明らかにし、ナノ粒子のリスク管理を進める必要がある。

以上 (文責 鈴木)