ナノ粒子による健康影響2015.4.4

超微小粒子(ナノ粒子)の健康影響

東京理科大学 研究推進機構 総合研究院 講師 梅澤雅和先生

大気中微小粒子(PM2.5)の健康影響

ここ数年の中国における冬季の大気汚染とその日本への越境汚染が問題となり、汚染の主体をなすPM2.5がクローズアップされた。アメリカでは20年余り前に、各種の大気汚染と死亡率との関係を調べるために、各種汚染の濃度が異なる6つの都市の死亡率を調べたところ、各種汚染物質のうちPM2.5のみが死亡率と高い相関性を持つことが分かった。更にPM2.5の暴露によって呼吸器、脳卒中、循環器疾患の発症、悪化更には死亡率にも正の相関をする(濃度が増すと疾患が悪化する)という研究結果が発表され、アメリカでは1997年にPM2.5の環境基準が制定された*1)。日本でも環境省からPM2.5情報が出され*2)、高濃度時の外出注意報等が出されることになっている。

 

*1) 年平均値は当初15μg/m3で2013年改訂され12μg/m3、日平均値は35μg/m3

2)日本では12年遅れて2009年にPM2.5の環境基準制定、

年平均値15μg/m3、日平均値35μg/ m3

 

超微小粒子(ナノ粒子)とは

粒子の大きさを単純に言えばPM2.5は、直径2.5μm以下(1μm=1/1000 mm)の粒子、ナノ粒子は0.1μm以下(1μm=1000nm、0.1μm=100nm)の粒子。例えば0.6μmのPM2.5が砕けて0.06μmのナノ粒子になったとすると、ナノ粒子の体積は1/1000になるから1000個のナノ粒子が生じたことになり、表面積は1個が1/100となり、1000個だから全体で10倍になる。粒子の表面が反応の場になるから、ナノ粒子に変化すると反応性が強くなり、これが工業材料で有用に使われるが、生体にとって有害な影響も強まる可能性が考えられる。

ナノ粒子は凝集し易く、車から排出されると沿道近くには多量に分布するが、離れると急減する。これが広く分布するPM2.5とは異なる特徴である。

 

ナノ粒子の生体影響

吸入されたナノ粒子は気道奥の肺胞にまで到達し、そこから血管を経て身体の他の組織にも移行する。動物実験ではナノ粒子の投与で炎症性の免疫反応が起き、妊娠マウスに投与すると出生仔の脳やオスの生殖器に移行することが確認されており、仔の外界への反応性や運動量を低下させたり、アレルギーを引き起こしやすくする。これらの研究から、妊娠中の母親のナノ粒子暴露が、出生後の健康に影響する可能性も考えられる。しかしこれまでの研究では、PM2.5の健康影響は明らかになっているが、ナノ粒子についてはまだ明らかではない。今後、更なる研究により許容暴露量等を明らかにし、ナノ粒子のリスク管理を進める必要がある。

以上 (文責 鈴木)

講演会資料(資料をダウンロードして、見ながら先生の解説を御聞きください。)

梅澤先生講演資料1-30.compressed

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