東京外環道路による大気汚染

(1)外環道路千葉区間の環境影響評価(アセスと略す)の検証

平成8(1996)年に実施された当局(国土交通省と東日本高速(株))による外環千葉区間のアセスについて、大気汚染物質NO2に絞って検証しました。

(イ)NO2濃度の環境基準

1978年に中央公害対策審議会が「長期暴露におけるNO2の年平均濃度は0.02~0.03ppm以下」の答申を行い、これに基づき同年に環境基準「1日平均値の年間98%値が0.04~0.06ppmのゾーン内又はそれ以下」が定められました。一般にアセスでは「年間98%云々」は精度等に問題があるので、「年平均0.02~0.03ppm以下」を守るべき目安としています。

(ロ)当会の実測に基づく予測値と当局アセスの予測値

外環千葉区間は全面開通で現在の埼玉区間より交通量の増加が見込まれます。そこで現埼玉区間のNO2平均濃度から千葉区間計画路線のそれを差し引き、開通後のNO2増加濃度を予測しました。この予測NO2増加量は過大評価でないことは明らかです。

2007年から2009年の定例測定時に、埼玉区間の遮音壁外側約20か所と千葉区間計画路線約20か所をほぼ同時測定しました。表1に各測定時の両者の平均値とその差を示します。0.010~0.017ppmの濃度増加が予測されました。近辺の本八幡局と市川局の6時点のNO2平均濃度それぞれ0.0245ppmと0.0337ppmをバックグランドとして増加量と合わせると、0.0345~0.0503ppmとなりアセスの目標値0.03ppmを大きく超えます。

表1 外環道埼玉区間と千葉区間計画路線のNO2平均濃度と両者の濃度差

2007年 2008年 2009年
6月 12月 6月 12月 6月 12月
平均濃度ppm 平均濃度ppm 平均濃度ppm 平均濃度ppm 平均濃度ppm 平均濃度ppm
A埼玉外環 0.0379 0.0591 0.0430 0.0477 0.0343 0.0344
B計画路線 0.0249 0.0417 0.0260 0.0372 0.0211 0.0244
A-B 0.0130 0.0174 0.0170 0.0105 0.0132 0.0100

一方、当局アセスにおける千葉区間のNO2濃度予測値は表2の通りで、一般部、特殊部の年平均増加濃度はともに0.0040ppm以下と当会予測値の1/2.5以下で、バックグランド値を合わせてもほぼ0.03ppmをクリアするとしています。

表2 平成8年の当局アセスにおける外環道千葉区間のNO2濃度予測値

一般部10地点 ジャンクション等特殊部4地点
計画道路による年平均増加濃度 0.00365ppm 0.0040 ppm
バックグランドを加えた年平均濃度 0.0271 ppm 0.0273 ppm
日平均値の年間98%値 0.0522ppm 0.0528 ppm

 

(ハ)市川市による外環千葉区間の独自アセスによる予測値

平成2(1990)年市川市は独自で千葉区間のアセスを行いました。結果は掘割スリット構造(現行の構造)では増加量が0.0122ppmとなり、バックグランドと合わせると0.03ppmを越えるので、蓋掛け構造等を提唱しています。この増加予測値は当局アセスの3倍以上で当会の予測値に近い値です。

(ニ)当局による埼玉区間アセスにおける予測値と実際値

外環埼玉区間の当局によるアセスでは、予測目標年度1999~2000年で、草加市原町測定局等5局で、いずれも年平均濃度は0.03ppm未満でした。しかし予測年度での5測定局の実際の年平均濃度は全て0.03ppmを超え、アセス予測値は過小であったことが明らかになっています。

(ホ)当局アセス予測値の過小の原因と、外環事業推進の正当性

当局がアセスに用いたNOガス排出係数は定速走行時のもので、市川市が用いた実測モードのそれの数分の1で、これが両者の違いの要因と見なされます。この点は平成8年の県アセス審査会でも訂正を求めたのに当局は拒否したとのことです。以上の検証から、当局は外環千葉区間のNO2濃度を不当に低く予測したと見なされます。

2007年に外環千葉区間の周辺住民570名が高柳俊暢氏を代理人として、県に公害調停を申請しました。2010年に県調停委員会は特殊部の再アセス等の調停案を提示し、当局の受諾拒否に対して、異例の受諾勧告と調停案の公表をしました。本道路による公害の未然防止が必要と考えたのでしょう。本道路は収用事業が認定されましたが、公害問題が未解決であり、収用事業として推進すべき正当性はありません。

 

(2)外環道埼玉区間による大気汚染の周辺への影響調査

外環埼玉区間道路から排出される高濃度NO2の周辺部への影響を調べました。方法は、三郷から和光までの区間で幹線道が交差していない5か所を選び、各々その両側について、壁の内面と外面、壁から50、100、200、500mの12地点のNO2濃度を、改良型簡易カプセルを1地点3本用いて測りました。測定は、夏季 2007年8月9日(木)10時~10日(金)16時と、冬季 2007年12月20日(木)10時~21日(金)16時 の2回行い、各地点のカプセル取付け時間長さは全て24時間暴露値に調整しました。結果は表3に集約しました。濃度は5か所の平均値で、両側の平均値は壁内面の値との比率も示しました。表から、遮音壁はすぐ外側の濃度を半減させますが、この濃度は500mまで殆ど変わらず、一般住宅地より高いことが分かります。外環道路のように交通量の多い道路は、排気ガスによる影響も広範囲に及ぶと考えられます。

表3 外環道埼玉区間の道路周辺部における二酸化窒素(NO)濃度 (ppm)

測定日 (A)2007年8月9日~10日 (B)2007年12月20日~21日
内回り濃度 外回り濃度 両側平均 内回り濃度 外回り濃度 両側平均
濃度 比率 濃度 比率
遮音壁内面 0.0778 0.0748 0.0763 1 0.0810 0.0752 0.0781 1
遮音壁外面 0.0394 0.0395 0.0395 0.52 0.0528 0.0428 0.0478 0.62
壁から50m 0.0364 0.0370 0.0367 0.48 0.0444 0.0424 0.0434 0.56
壁から100m 0.0362 0.0348 0.0355 0.47 0.0442 0.0404 0.0423 0.55
壁から200m 0.0340 0.0373 0.0356 0.46 0.0430 0.0410 0.0420 0.54
壁から500m 0.0396 0.0335 0.0366 0.48 0.0440 0.0376 0.0408 0.53
周辺一般局 0.0211 0.28 0.0376 0.48

以上

県民くらしの白書投稿 12July26        上記のPDF版です。ご自由にダウンロードしてください。

 

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