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PM2.5シンポジウムの報告③ 2014.9.15

「深刻なPM2.5汚染 発生源は私たちの身近に」として、東京あおぞら連絡会等の主催で日本教育会館(神保町)で開かれたシンポジウムの概要を報告します。

PM2.5対策と健康被害 — 西村隆雄(東京大気汚染公害裁判弁護団)

東京大気汚染裁判で原告の喘息患者らは、PM2.5の環境基準制定と東京都における成人喘息患者救済制度の復活という2つのものを勝ち取った。救済制度は国、都、自動車メーカ、首都高速の4社の負担で発足したが、発足から5年後の見直しで壊されようとしている。都のみの負担で継続し、新規患者認定の打ち切り、子供患者の18歳時点での助成打ち切り、認定患者の負担増等の議案が9月都議会で審議されている。現在国に対しても制度の継続を求めているが難航している。

 

 

PM2.5シンポジウムの報告② 2014.9.15

「深刻なPM2.5汚染 発生源は私たちの身近に」として、東京あおぞら連絡会等の主催で日本教育会館(神保町)で開かれたシンポジウムの概要を報告します。

万病のもと!PM2.5の健康影響 — 嵯峨井勝(つくば健康生活研究所)

病気の90%以上は活性酸素によって起る。PM2.5やディーゼル排気粒子(DEP)は呼吸器を介して血液中に入って全身を巡り、化学反応や免疫細胞の働きで多量の活性酸素を作る。呼吸器や循環器の病気の他、DEPは認知症や男性の不妊を引き起こすとのデータも出ていて、WHO(世界保健機構)もディーゼル排気ガスを最強の発がん物質と認定した。近年は超微細粒子(ナノ粒子、0.1μm以下の粒子)が増えており、最も有害で規制が必要。NO2などの大気汚染は改善されてきているが、児童の喘息患者数は増え続けている。PM2.5やナノ粒子への監視が必要。

 

PM2.5シンポジウムの報告① 2014.9.15

「深刻なPM2.5汚染 発生源は私たちの身近に」として、東京あおぞら連絡会等の主催で日本教育会館(神保町)で開かれたシンポジウムの概要を報告します。

深刻なPM2.5汚染とその発生源 — 伊瀬洋昭(都立産業技術研究センター)

米国に12年遅れで1997年に日本でPM2.5(粒径がほぼ2.5μm以下の粒子)の環境基準が作られたが、汚染は依然深刻で、2013年度の環境基準達成率は一般局6.7%、自排局は0%。大陸からの越境汚染は、大陸に近い地域では影響を受ける時もあるが、東京など都会では都市汚染が主で、影響の可能性があるという程度。都内でのPM2.5発生源は自動車が1/4、船舶1/5、建設等特殊車が1/8で、自動車排ガス規制の更なる強化と共に、船舶や特殊車の排ガス規制が重要。

「道路と大気汚染」報告と講演会 概要報告

日 時  平成26年3月9日(日) 午後1時30分~4時20分

場 所  市川市中央公民館  第一会議室

司会は中島さん

① 2013年度市川市内二酸化窒素(NO2)濃度測定結果の報告

市川の空気を調べる会   鈴木一義

2013年度の定例測定日は、市川市測定局のNO2濃度から見ると、6月度は市全体が低めの日、12月度は高めの日にあたった。このため当会のカプセル測定値も6月度はこれまでになく低くなり、12月度はこれまでの最高レベルであった。しかし定例測定日を挟む長期間の平均濃度で見ると、6月度と共に12月度も前年度より低下していた。しかし12月度の住宅地点はここ数年ほぼ横ばいで、これは市内を走行する大型車の増加の影響が考えられた。

② 外環道路問題の現状と今後

市川市松戸市外環連合   高柳俊暢

外環道路は完成時期を当局は平成28年3月から平成30年3月まで2年延期したが、莫大な予算執行が必要なことからも、高速部の供用開始は5~6年後、国道部は更に4~5年先になると予想される。

環境対策の見直しを求めて2007年に千葉県に対して起こした公害調停では、2010年9月に、特殊部の模型実験などの環境影響予測の実施と住民を加えた協議会の設置を求めた調停案が提示された。当局の受諾拒否を受けて、調停委員会は受諾勧告と異例の調停案の公表までしたが、当局は拒否した。そして独自の環境影響予測を再実施した。しかしこれは、1日9万台の予測走行車量に対してNO2の予測増加濃度はバックグランドの1/20 、SPM増加は実質的に0という、全く現実から離れた従来の予測と同様のものであった。

今年1月末に国道2号線の高架化に関わる裁判で、広島高裁は最高裁の判例を超える騒音レベルは、例え幹線道路の特例として作られた環境基準を満たしていても受忍限度を超えているとして、国に住民への賠償を命じた。国は上告を断念している。千葉の外環道路の騒音予測も最高裁判例を超えており、環境対策の見直しを求めて争える状況がある。また、外環道路により生活道路が使えなくなったり、横断に時間がかかり過ぎたり、側道の2車線部分が増えたりと、多くの問題があり、今後も監視と対応が求められている。

③ 自動車排ガスとPM2.5 ―東京大気裁判をふまえて―

西村隆雄  弁護士、元東京大気汚染裁判弁護団事務局長

東京大気裁判では2つの大きな社会的前進を勝ち取った。一つはPM2.5の環境基準の

制定、もう一つは東京都における公害被害者認定制度の復活である。

講演する西村弁護士

(1)PM2.5について

PM2.5の環境基準の制定

PMとは浮遊粒子(particulate matter)の頭文字をとったもの。浮遊粒子には粗大粒子とPM2.5を含む微細粒子があり、微細粒子は肺の奥にまで入り込んで有害性が高い。

PM2.5の健康影響についてはアメリカなどで多くの調査結果が出ている。短期影響と長期影響があり、前者としては、呼吸器系や循環器系の死亡率と大気汚染と相関性があること、またこれら疾病による入院とPM2.5と相関のあることが明らかになっている。長期影響としては、アメリカ白人8000人を長期追跡調査し、大気汚染の最高時は低い時に比べ死亡率が1.26倍になる。また120万人の追跡調査ではPM2.5濃度が10μg/m3

上昇する毎に全死亡率が7%、心疾患による死亡率が12%上昇した。

これらの結果からアメリカでは1997年に、ヨーロッパでも早くからPM2.5の環境基準が出来ていたが、日本は出来なかった。東京大気裁判の和解条件でこれの制定を国(環境省)に約束させ、更にアメリカのPM2.5の健康影響データを現地で収集したりして執拗に迫り、ようやく2009年に制定させた。

PM2.5の越境汚染について

いま中国でのPM2.5などによる大気汚染が日本に影響を及ぼしていると宣伝されている。しかしこれを否定する論文が出された(大気環境学会誌 45巻6号、2013年)。2013年までの10年間の各1月の平均PM2.5濃度を北京と福岡で見ると、シベリア高気圧が強い年は大気が安定して北京ではPM2.5汚染が高まり、弱い年は汚染が低下したが、福岡のPM2.5濃度は変わらず、両者のPM2.5濃度に相関はなかった。また2013年1月はシベリア高気圧が例年になく強く、中国でひどい大気汚染が発生したが、大気が安定して日本への輸送量は増えておらず、代表的越境汚染地の長崎県福江島では2013年1月は他の年より低目であった。これらの結果から、中国でのPM2.5の高濃度汚染と日本でのPM2.5汚染とは直接の関係は薄いとしている。

PM2.5を減らすために

日本でPM2.5の環境基準が出来た時に、その基準を満たす測定局は殆どなく、元々日本にPM2.5の汚染はあり、現在でも都市の自動車排気ガス測定局で基準を満たすのは20%前後と汚染は続いている。東京都の調査によると、有害な人工物由来のPM2.5の1/3は自動車が発生源であった。PM2.5を減らすには車対策が重要ということである。

(2)公害被害者認定制度の復活と現在の状況について

東京大気裁判は原告が600数10名で、2002年に判決が出されたが、この時患者など数1000名が駆け付けた。判決は沿道の7名だけが公害被害者として認定されるという厳しいものだったが、石原都知事には控訴を断念させ、自動車メーカーから資金拠出の確認書を取った。これらを持って裁判所に「公害被害者認定制度の復活」という条件の和解勧告を迫り、ついにこれを出させ、国、都、ディーゼル自動車メーカー、道路公団からの拠出金200億円で2008年8月から、都民に対して認定制度が復活した。これは大きなこと。これまでに7万8000人が認定されている。

しかしこれには5年後の見直しという条件が付いており、継続させるために都内の医師会に働きかけて、保守的な医師会の53中41から意見書を得ている。しかし都は資金が足りないとして、新規認定を2015年3月で打ち切り、既認定者の2割自己負担の方針を打ち出している。この間国は、そらプロジェクトという車による大気汚染と呼吸器疾患との関連性を調べる大規模な追跡試験を行い、学童に関しては道路との関連があり、非喫煙の成人にも関連性が見られた。これらの結果をもとに国や都に認定制度の復活を働き掛けているが、今のところ厳しい状況が続いている。

以上

喘息児は増え続けているという現実があり、都の認定制度は全国に適用すべきあると考えます。このためには、ようやく復活した都の制度はぜひ存続させたいものです。西村さんは現在も、健康被害者の皆さんと共に、国や都と精力的に交渉を続けています。私たちも署名活動等で積極的に協力しましょう。

(文責 鈴木)